亜鉛ダイキャストのバリ除去 最適な超音波バリ取り技術
様々な金属のダイキャストのバリの内、超音波バリ取り技術で もっともよく取れると言う印象の 有るのが、亜鉛ダイキャストである。完全にふさがっている穴や、比較的大きな湯バリも 超音波でよく取れる。亜鉛ダイキャストのバリ取りは、超音波バリ取りが最も適していると 考えている。
ただ、あまりに 良く除去出来て 中国で失敗した例がある。
日系の大手企業の福建省の工場の日本人技術者が、突然、実験室に 亜鉛ダイキャスト製品をたくさん持ちこんできて 超音波バリ取り実験をやってほしいと言う。見るとバリが大きく、10mm程度の穴も 完全にふさがっている所も多い。これは、超音波バリ取りでは もちろん、ショットブラストでも除去出来まい、成型不良の典型だなと 下がって実験を見ていたら、ランダムに重ねていた亜鉛ダイキャスト製品のバリが、超音波で ぼろぼろと 落ちて行くのが見える!え~と思って、結果に お客さまと立ち会うと ふさがっていた穴もきれいに、開いて、バリは、何処も 全てきれいに取れている。
お客様は、大変喜んで、この実験機でいいから すぐ売れと言う。実験機納入後 追加で 4台 発注したいとも言うので、複数あった実験機のうちの一台を 緊急整備して納入し、次の注文書を待った!
1ヶ月後苦情が 来る。ストレーナー、フィルターが すぐ詰まって困ると言う。すぐ 技術を派遣したが、すでに遅し!お客様は何と 濾過圧力警報器の警報がうるさいので、設定を 0.4MPaを 0.7Mpaの変更。そのため フィルターが 潰れ、除去されたバリは、コア機器の真空脱気装置にまで 侵入、溶存酸素濃度が上昇、結果として 超音波バリ取り能力が 低下。真空脱気装置を交換補修しなくてはならなかった。お客様は、実験室でバリが きれいに取れた時に バリの量に気がつかなかったメーカー責任と主張され、妥協点を見つけるのに 大変時間がかかった。もちろん、日系企業の日本人技術者たちである。
その時以来、亜鉛ダイキャストのバリは、根元の強度が 弱いのか、繰り返し応力に弱いのか 実によく取れるが、あわてず、除去されるバリの量に 十分注意して 最終仕様を決めるようにしている。私の苦い失敗例である:文責 柴野